第1回

新型コロナ影響下での保育園

安藤悦子

 

 筆者は臨床心理士として東京都内の認可保育園で巡回相談を継続して行っている。

今回の新型コロナによるさまざまな規制、生活の変化、行先の見えない疾病への不安などが保育園児や保 護者、職員にどのような影響をもたらしているだろう か。

6園という限られた数ではあるが、それぞれの園 を巡り、園児、保育士との関わりを持ちながら見聞きして感じていることを少し記してみたい。

 自粛期間中の4月~5月、通園していた子どもは普段の1~2割程度。

仕事の関係で在宅勤務が困難な家 庭、通常から養育に困難を抱えている家庭の子どもなどが登園していた。園児の人数に合わせて保育士も分散して出勤し、園によっては園児とマンツーマンのよ うな関わりで過ごしているクラスもあった。

「みんなお 休みなのになんで僕だけ?」と不満を述べる年長児もいたり、仲間のいない淋しさもあったが、保育者を独 占できるという普段にはない特別な期間でもあった。

 6月、自粛が解除になり、約9割の子どもたちが園に戻ってきた。

保護者は、コロナ禍での集団生活への不安よりもむしろ登園できてよかった、ホッとして いる、という思いのほうが大きかったようだ。

日常の園生活の様子は感染予防という点からさまざまな変化が起きている。保育園では保護者が朝夕保育室に 入り、着替えや持ち物などの整理をしながら、子どもの様子について保育士と言葉を交わすことが常であり大切 な時間となっているが、コロナ以来保護者は保育室に入れなくなった。

玄関または保育室の入り口で受け渡しのみ行われ、情報交換は連絡帳に頼っている。

その日の朝 家であったこと、日中に保育園であったことなどを生の言葉で伝え合えないもどかしさがある。

 保育活動もさまざまな制限を余儀無くされている。

例年行われている行事やプールなどの活動は中止され、自由な遊びの時間が増えているが、人数が密になりすぎないよう園庭をクラスごとに交代で使ったり、 散歩に行く公園も近隣の保育園と打ち合わせて時間帯 が重ならないように注意している。

子どもたちが使う 遊具のうち、消毒の難しいものは使わないようしまっ ている。

自粛生活後、子どもたちの体力が低下していることは保育士たちの多くが感じており、時間、空間 に種々の制限がある中、日々の生活の中で体を使う活動をいろいろと工夫し、子どもたちを誘っている。コ ロナを機に、子どもたちの新しい遊びや楽しみ方が生 まれてくる可能性もありそうだ。

 密を避けるということでは食事のテーブルの配置を変えたり昼寝の布団を離して並べるなど、距離をとる配慮はしているが、自由な遊びの場面で子どもたちに 「くっつくな!」「大声をだすな!」と言うことは無理 がある。

子どもたちはいつも通りさけび、大声で笑い、取っ組み合いのけんかをし、じゃれ合っている。保育 士も泣く子どもを抱きあげ、午睡時には寄り添ってトントンしている。

 約2か月間家庭で保護者と過ごし園に戻ってきた子どもたちは、園生活の変化に当初多少の戸惑いはあったものの、1~2週間の慣らし期間の後、新しい生 活の様式を受け入れて過ごしている。

コロナの影響と言い切れるような不安定さは、今のところ見られていない。

しかし感染の広がりは長丁場とも予測される現在、今後どのような影響が表れてくるかは予断を許さないだろう。

 一方少数ではあるが、感染への不安から保護者が自粛を続け自宅で過ごしている子どもたちがおり、その様子は見ることができず気になるところである。

保育士の仕事量は施設、用具の消毒などをはじめ明らかに増えている。

しかし彼らを最も疲弊させているのは、見えない感染に対する不安感ではないだろうか。

「学校などの集団でクラスターが発生したというニュースに接するたびに、うちの園で起きたらどうし よう・・・と鬱になりそう」と訴えた保育士もいた。

疾病そのものの怖さよりも社会から受ける反応の怖さのほうが現実味を帯びてしまっているのは憂うべきことである。

コロナ不安の中、子どもたちが安心して過ごし育つ場を守る保育士たちの仕事の現状を理解し、支え合える社会であってほしいと願っている。

日本乳幼児精神保健学会 学会誌 Vol.13 2020

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