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内海千枝 保健師 北海道

 

 北海道で新型コロナウイルス感染症の方が把握されて9ヶ月が過ぎようとしています。

2002年に新たに把握されたSARS(重症急性呼吸器症候群)は、急激に重症化し、致死率も高かったにもかかわらず、9ヶ月程で終息宣言が出され、日本では、一件の対応に終わったと記憶しています。そのため、今回のCOVID-19も「日本は大丈夫」「すぐに収束する」という考えもあり、私は今の日本の状況を予測することができませんでした。

 感染症の予防には、感染源となるものを体内に取り込まないことが基本ですが、このCOVID-19においては飛沫を広げない、吸い込まない、手から自分の体に取り込まないが重要なポイントなのだと見えてきました。多くの方の犠牲と努力の結果、分からない・見えない敵から対応できる相手となってきました。

 しかし、感染リスクが社会を形成するために必要なコミュニケーションや行動様式に有るほか、発症前の無症状でもリスクがあることにより、保健医療の対応だけではなく、社会生活の制限が求められ、世界的に大きく混乱することとなりました。

 そして、子ども達にとっては、「人」として成長する大事な環境が壊されていくことになりました。集団生活、楽しい会話、ふれあいが難しくなり、大人との情動の共有をマスクが寸断し、他者とのコミュニケーションがとれないこと等が問題となっています。 マスクは感染リスクの低減効果もあり、子どもの発達保証のためにはマスクについてどのように考えたらよいか、本当に難しい対応が求められています。

 マスクを着用すると、なぜか緊張感が高まる気がします。また、マスクをつけても感染リスクが「0」にならない不安があり、手洗いや手が触れたところの消毒作業などの日常と違う作業が増加する負担感も常にあります。さらには「万が一自分が発症したら?」「集団にいる子どもから発症したら?」という不安、「感染してはいけない」という緊張感、「親の仕事が、患者に接する可能性のある職場等」のため子どもの登園拒否が有る等、大人も常に不安と緊張の強いものになっているでしょう。

 

 さらにストレス解消法の多くが感染症リスクが高い行動と言われ、自分の心を解放する機会を失っています。太古の時代、日頃対立していた部族と年に1回の収穫の時には、共に飲み、食べ、歌い、踊ったと聞いたことがあります。これらは人の感情を表現したり和解する等の大事な行為であったと思いますが、感染リスクのある行動として長い期間制限され、大人にも心の余裕がなくなってきています。

 

 こんな状況で、子どもを保育する大人が感染予防と保育の両立をどうしていったらよいのかと考えているときに、認知症の方のケアマネージャーさんにお話を聞くことができました。その方は、初めて面接するときなどは、一度マスクを外した顔を見てもらい、安心してもらってからマスクをして面談するそうです。あくまでも笑顔の表情は絶やさないでマスク越しで、介護のケアプランの話をするのですが、高齢者の方は落ち着いて話を聞いてくれるそうです。

 

 また、保育園の園長先生に伺ったお話でも、いろいろマスク着用のことでも悩んだそうですが、子どもは大人の心を読めるから、マスクをしてもいつも通り、笑い、振る舞おうと決めて(乳幼児教育実践家の先生の助言をいただいたそうです)対応しているそうです。感染リスクに対しては、手洗い、保育室の消毒、ソーシャルディスタンス、給食の時の会話等には注意ながら、保育士の先生方はマスクをしてもいつも通りの笑顔・話し方・振る舞いを心がけているとのことです。3密になることもあるそうですが、子ども達が楽しく予防行動を学ぶことができるよう気をつけているとのことです。園児達はマスクになれて、元気に生活しており、のびのびとしているとのことでした。

 

 認知症の方と乳幼児では違うことも有るかもしれませんが、マスクを着用した大人の目の中にある「不自由で複雑な孤立した大人の深層心理」を読み取り、日々の会話を聴き、全体の雰囲気、後ろ姿を見て、同じように振る舞うのではないだろうかと思います。

 

 マスク着用等の感染対策をとりながらでも、大人が大きな気持ちで、目の前の出来事に振り回されず、明日の未来を自分で切り開く気持ちを持ち続けられるように応援していくことが、今の社会や乳幼児精神保健のためにも必要なのではと思います。

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